Her Tea

f:id:notyouraverageminimalist:20160521164650j:plain

あぁなつかしい。

おもわず手をのばしてしまった。

naoの家のお茶はいつもトゥワイニングスのアールグレイだった。

近くのデリで、ちいさな箱入りのを買ってきていた。

あのころ、新谷先生がミーをひとめ見るなり

「あなたはとてもやせていますね」といって

先生のクリニックの診療室でお会いしたわけではないのに

いきなりそんなことをいわれて焦ったミーはしどろもどろに

「食べても太らない体質なんです」っていったけれど

新谷先生はそれをおもいっきり無視して

「寝る直前に食べてはいけません。3時間前には夕食をすませなさい」

と、寝る直前の食事がどんなに身体に悪いのかとうとうと説明してくださった。

先生、もしかしてイースト・ヴィレッジのカフェでnaoとミーを見たことある?

ってぎくっとした。

だってミーたちふたり、深夜、いつもカフェに入り浸って

フライドチキンのサンドイッチとガトーショコラを食べてたから。

でもふたりともがりがりにやせてたよね。

ミーの東京の家にnaoが泊まりにきたときも

ミーのA.P.C.のほっそいデニムパンツをふたりで制服みたいにずっと着てた。

あのころのミーにとっては社交生活が人生のほぼすべてで

東京の友人たちにnaoを紹介してまわるのに必死で

でもどんな場所でだれに会うときだって

ミーたちは何日間も洗濯もせずに着続けてた

キャミソールにデニムパンツにフリップフラップスで

超レイドバックなアディトュードだった。

友人たちは「アメリカからヒッピーのふたり組きた?」

くらいにおもってたかもね。

naoは家族みたいなかんじだよ。

まったく気を遣わずにそのままのミーでいられる。

ずっと昔、カルフォルニアに暮らしてたときのことをおもいだしてたよ。

すべてがスーパーナチュラルでケアフリーだったころのこと。

だからnaoの家とアールグレイはなんだか不似合いたった。

でもだいたいあの狭くて薄暗いアパートメントから

あんなに美しい女の子が出てくるなんて

いったいだれが想像しえただろう。

そっちの方がだんぜん不似合いだったよね。