Gift

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ボネダンヌのくるみとゴルゴンゾーラのパンは

フィリングが入れられているフチの部分が頼りなくひらひらしていて

素人がアーティスト気取りでつくったぶかっこうな陶芸作品のようで

まぁこれはパンだからむしろ微笑ましいんだけど

ミーはこれを見るたびに

陶芸のクラスで思い通りに操ることのできない粘土相手に

四苦八苦したことをおもいだしてしまう。

南カルフォルニアの高校に入ったばかりのとき

英語ができなくても楽しめるようにと

カウンセラーが気を利かせて陶芸のクラスを選んでくれた。

わけもわからず教室に行って教わった通りにボウルをつくるんだけど

英語とか関係なくただミーがあまりにも不器用なせいで

ボウルはひしゃげてあやうい形になってしまう。

ある日周りを見回す余裕ができて気づいたのが

教室のはしっこにあるろくろを使いこなして

素晴らしい作品を次々に生み出してる男の子。

高校生なんだけど男の子っていうより青年てかんじで

いっぱしのプロみたいな雰囲気でもくもくと作陶にうちこんでた。

アメリカ人ぽくなくて静かで無口で、でもとにかく圧倒的な存在感だった。

先生も彼には指示も与えず好きに作らせていて

お昼休みも放課後もずっとろくろを使わせてあげてた。

ミーはあぁこういうひとが陶芸家になるんだろうなっておもった。

あれがミーが才能ってものを真剣に意識した初めだったとおもう。

そして彼のような神の手を持って生まれてこなかった自分には

果たしてどんな才能があるんだろうとずっと考えた。

あの日々のことを、このパンを見るたびにおもいだしちゃうんだよね。