Notihing to Loose

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ある日、イーストヴィレッジを歩いてたら通りの向こう側にティムがいた。

むっきむきに鍛えあげたご自慢の身体を

まっしろな薄手のタンクトップと

ぎりぎりまで短くカットしたデニムパンツで

申し訳程度に包んで見せびらかしつつ

いかにももの欲しそうな顔できょときょと辺りを見回しながら歩いてた。

あ~、いま考えるとあのかっここそ、ミニマリズムじゃない?

それに安上がりでもあるな~。

あのころのティムっていまのミーと同じくらいの年齢かな?

ミーいまあのかっこで街歩けるかっつったら無理だよね。

いや、年齢の問題じゃないかも知れないけど。

あの、ティムの体当たり的な生き方とか

失うものは何もない、って常に前のめりな姿勢とか

どんなときにでも恋に落ちる準備万端なところとか

もうつっこみどころ満載、っていうか学びどころ満載?

これで全部よ文句ある?ってかんじで

手持ちのカード最初っから全部見せちゃってるような

そういうところがミーは大好きだった。

「ティム~!」っと呼びかけるとダイヤモンドみたいな瞳をきらきら輝かせて

大股でひょいひょいっと歩いてこっちにやってきた。

「なによっ。女と話してるとこ見られたくないのよっ!」って

「ややっ。ミーと話してても話してなくてもユー激かまにしか見えないから!」

「ふんっ。じゃ、わたしもう行くわ!」

「えっ、せっかく会ったんだからお茶でも…」

「I'm busy!!!」

ってつれなかったけど、ティムにも優しいところはある。

ミーの誕生日に叩きつけるようにぬいぐるみを投げてよこして

「はいっ!おめでとっ!」

って照れ隠しみたいにそっけなく。

「ギャラリストの彼とどうして別れたの?」って

ティムを問い詰めて泣かしちゃったこともあったな~。

いま、世界のどこかでティムがしあわせに暮らしてますように。

あのダイヤモンドみたいな瞳が輝いていますように。

そしてミーがティムの半分でも勇敢に生きられますように。