Meeting a Beautiful Soul
数週間前の小雨のぱらつく朝
アパートの裏口の扉を開けると風のように誰かが通り過ぎていった。
一瞬のことだったから、気にもとめずにゆっくりじぶんの自転車まで歩いていって
開錠して、サドルの雨粒を拭いて…ふと顔を上げると
出口のドアをずっとホールドしてくれてるひとがいた。
え?さっきさ~っと通り過ぎてったひと?
ずっと待っててくれたの?
「いいです、いいです、大丈夫だから!」ってあわてていったけど
にこにこ笑いながらやっぱり待ってくれてる。
それが、パスカルとの出会い。
「どこの国の方ですか?」と訊くと「?」という顔をしたので
「くに」とだけいってみたけど、やっぱり「?」という顔をしてる。
あ~、日本語、わかんないんだ。
とおもってたら、「どこから、きたか、ですか?」と
ゆっくりのたどたどしい日本語で聞いてきた。
そうそう!っていうと
「生まれてから、ずっと、ニューヨークで暮らしてました」
と、たぶん、何度も練習したにちがいない文が返ってきた。
あ~そう!ミーもずっとニューヨークに暮らしてたよ!
「日本でドアをホールドしてくれるひと、めったにいないよ」
っていうと、ちょっとかなしそうな顔をして
「電車でお年寄りが乗ってきてもみんな知らん顔してる」
といった。そうだよね。
ミー、バスとか電車とか乗らないから忘れてたけどそうだった。
同じ日本人として情けないよ。
それからミーたちは雨のなか小一時間ほどおしゃべりをした。
大人になると、毒舌で話がうまいともだちなんて要らない。
話なんてうまくなくても、言葉がうまく通じなくても
にこにこしててハッピーなオーラがあふれてるひととともだちになりたい。
美しい魂をもっているひととであえること以上にこの世に素敵なことなんてない。
こんな新しい友人が、同じ屋根の下に住んでるなんて心強いよ。