How You Live Your Life

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Hiroに初めて会った日のことをおぼえてる。

ちょうどHiroが父親の転勤で移り住んでいた街を訪れてて

だれかが「そうだ、Hiroに会いに行こう」っていいだした。

ミーは「Hiroってだれ?それよりトランポリンしてたいんだけど」

ってかんじだったけど

みんなとはぐれたら大変なことになるのはわかってたから

仕方なくついてくことにした。

「Hiroって男の子を探してるんですけど~?」

「Hiroがどこにいるか知りませんか~?」

って探し歩くこと小一時間、やっとみつけたHiroは

大人たちに混じってたったひとり、忙しく立ち働いてた。

そう、Hiroってやつは、こんなちっちゃなころから

自分のしたいこと、いたい場所がわかってる子だった。

せっかくの連休、小学生の男の子がともだちと遊びにもいかず

無償で一日じゅう働いてて

それがすでに、彼の将来としっかりつながってた。

いきなり大勢で訪ねてきたミーたちをみて驚いた様子だったけれど

数人の幼なじみの顔をみつけてなつかしそうに目を細めたHiro。

やぁ、って、それから、ミーたちひとりひとりの顔をじゅんぐりに見て

無言で相手を「認めた」ってかんじのあいさつをした。

そのとき初めてHiroと目が合った。

Hiroは決してハンサムなんかじゃないけれど

相手を自分の方に引きずり込むような強い力のある目を持ってる。

おっとっとって、ミー、吸い寄せられるようにおもったことをおぼえてる。

手を休めずもくもくと仕事を続けるHiroと、ひとこと、ふたこと、話をした。

こっちの生活はどう?もう慣れた?とかそんなこと。

っていっても、ミーは突っ立ってやりとりを聞いてただけだけど。

あんなに訊きまわってやっとのことHiroをみつけたっていうのに

ほんの数分だけおしゃべりをして

じゃあね、って手を振って、ミーたちはもときた道を戻っていった。

あれがHiroに会った初めの日。

何十年経ったって鮮やかに覚えてるよ。

それから数年後、Hiroが東京に戻ってくると聞いて

ミーたちはHiroが向こうの言葉で

へんてこなアクセントでしゃべるんじゃないかって危惧してた。

そのくらい、あのころのミーたちにとって

どんな言葉でどんなふうにしゃべるかは重要だったとおもう。

でも、戻ってきたHiroは流暢な東京語を操り

あっという間にミーたちになじんだ。

なじんだっていうより、気がつけばいつもみんなの輪の中心にいた。

カリスマって言葉があれほど似合うやつをミーは知らない。

みんなの輪に飛び込んでいくんじゃなくて

みんなをかき集めて輪をつくるんじゃなくて

Hiroがいると自然にそのまわりに輪ができた。

そういえばHiroは学校ではどんな存在だったんだろう。

制服は似合ってたかな。

スポーツはなんでも得意で

おもしろいことをいってみんなを笑わせてただろうし

きっと学校でも人気者だったんじゃないかな。

あのころの仲間にHiroの印象を訊いたら

「一緒にいて楽しいやつ」って答えたとおもう。

でも、ミーの印象は違う。

「おそろしく真面目で絶対手を抜かないやつ」

これがミーがHiroにたいしていつも持ってた印象。

子どもだって、ときには楽をしたくなる。

ちょっとさぼったりショートカットを選んだりしたくなる。

でも、Hiroにはそういうとこはみじんもなかった。

いつも、与えられた環境で自分の持っているものでベストを尽くす。

そうやって生きてた。

そういう日々の積み重ね、毎日の努力のすべてが

自分の将来につながっていくとかたくなに信じて。

神さまはこういうやつを決して見放したりしない。

最後に会ったとき、Hiroは人生初めての挫折を味わい

次のチャンスに向かって死ぬ気で頑張ってるとこだった。

「大変だね」とおもわずいうミーに

「大変なんかじゃないよ。自分の夢に向かって努力してるから」

「今、毎日がすごく充実してるんだ」

と静かにいった。

何年も一緒にいたけれど

Hiroがこんなにもまっすぐに自分のことを語るのは初めてだったからとても驚いた。

直球な言葉に、なんて返していいたのかわからずだまってるミーを

Hiroは、あの、どうしようもなく強い引力の目でじっと見て少しだけ微笑んだ。

それでミーもだまって微笑みだけ返した。

それから、あぁやっぱりこいつはいつだって100%の人間だっておもった。

あれが最後。あの日のことももう百億回くらいおもいだしたよ。

ミーはね、ミーの10代のほぼすべての間

Hiroの近くにいて、Hiroの生きざまをしかと見させてもらったことは

すばらしく幸運なことだったなってずっとおもってる。